『憧れのオートクチュールニット きれいな糸で、まっすぐ編むだけ！』発売2日前を迎えました。
いよいよ目前になり、本当に発売日に書店に並ぶのか？なんだか不安とワクワク感を感じて、時を待っています。なんだか出産数日前、予定日を迎えるときと同じような感覚を感じています。
初めての経験。心中が落ち着かず、心を落ち着かせるために編み物を始めました。
本の撮影依頼、ライティングや校正作業が続き、編み針を持ちじっくり編む時間が約3ヶ月作れなかったのですが、ココにきてぽっと台風の前の静けさのような気持ちで編み物をする時間を作ることが出来ました。
本発売目前。今回この本を作るにあたって一番伝えたかったこと、それは本書の「はじめに」に書かせていただいたことです。
少し早めにブログで紹介させていただきます。よかったらご一読下さい。
はじめに
手編みカルチャーにファッション性を
毎年秋冬になると定番マストバイアイテムとして必ずファッション誌に取り上げられる手編み風のニット。間違いなくおしゃれな存在のはずなのに、いざ手編みで何かを作ろうとすると、「ダサイ」「おばさんぽい」「難しい」というネガティブイメージに変わってしまう。「手編み風」のニットは好きだけど「手編み」は好きじゃない。そう思う方も多いのではないでしょうか。これは、おそらく30年前全盛期であった編み物カルチャーのイメージが、現代においても色濃く残っているからなのでしょう。
私は5年前上海でニットサロンを開講し、500名を超える生徒さんに恵まれ、生み出された作品も1000点を超えました。今でこそ個展やワークショップを開催するまでになりましたが、もともと私はニットを専門的に学んだわけではありません。幼少の頃から「もっとオシャレな手編みアイテムが作れたら」という思いを抱きながら編み物の世界に魅了され、洋裁の仕事をしていた母を横目で見ながら独自のスタイルで手編みの洋服を作ってきました。型にとらわれない手法で、ファッショナブルな手編みアイテムが簡単に作れるという評判が口コミで広がり、多くの20～40代の女性にファッションとしての手編みを楽しんでいただくことができました。
サロンでの教え方は少し変わっています。多くの方がファッション誌の切り抜きや作りたいデザインの服を探してお持ちになり、その雰囲気に近づけながら意向をカウンセリングし、編み方の技術も含め教えていきます。これらの手編み風ニットは、ベーシックな編み方でシンプルに作られているものが多く、初心者の方でも気軽に制作できます。
ニットで心が癒される
また、ニットサロンに参加された多くの方から聞くことができた言葉は、「編んでいる時間で心が癒された」「気持ちがすっきりした」という充実感や爽快感です。編み物とは、１本の糸を１目1目編むという作業の繰り返しで、この過程で脳内にα波が出て、心が癒されリラックスします。作品が仕上がるという達成感に加え、心が浄化される感覚を味わうことができるのです。私はこれを「ニットセラピー」と呼んでいます。
心身が不調でモヤモヤ感が抜けない時、静かな手編みの時間が心をほぐし、本質的なことを浮き彫りにしてくれます。対人関係で困っている時、相手を思って作った作品がコミュニケーションの架け橋となり、温かな絆を育くんでくれます。赤ちゃんを授かりたいと願う方は、まずは編み物をしながら内面を整えましょう。心に穏やかな空間が生まれ、赤ちゃんとの幸運な出会いに繋がります。これらはすべて、ニットサロンに通われた多くの方に共通して見られたニットセラピーのケースです。
本書では、皆様のライフスタイルに手編みを取り入れやすくするため、ベーシックかつ直線編みだけでできる作品を載せました。レディース、メンズ、キッズ＆ベビー、ファッショングッズからインテリアと幅広く扱い、糸の使い方や編み図を工夫し、高い技術を必要としないで楽しく編み物ができる環境を整えています。さらにひたすらまっすぐ編むという過程はニットセラピー効果を感じやすく、日々の編み物はリラックスできる楽しい時間になることと思います。
ぜひこれまでのニットとは一味違う、手編みの新しい世界に触れてみて下さい。人の手を通じて生み出された手編みの作品には、ぬくもりが宿り、身につける人に愛や優しさを届けます。ニット(knit)という言葉の語源には、「人と人を結び合わせる」という意味もあります。ぜひ編むという行為の豊かさを感じていただき、多くの皆様が笑顔と幸せに包まれますように。そして、あなたのライフスタイルが一層輝きますように。
横山 浩代
