BLOG

お絵かきの想像力、脳育〜子どもの豊かな心と対話する〜

2017.03.17


最近4歳の娘が描く絵を見て、「この子の心、健康でとても調子いいな!」と感じることが続いています。編み物の編み地を見て、編み手の置かれている心境が手に取るように分かるように、娘が描く絵を見ていると、その絵を描いている時の娘の心の状態が見えてきます。描いた絵を通じて娘と会話をすることが楽しく、どうしてその絵を描いたのか掘り下げて尋ねると、普段会話に上がらない娘の心象風景や気持ち、情緒を知るきっかけになります。

最近描いた絵で、私が気に入っているいくつかの絵をご紹介します。
上の絵は、「大好きな迷路」。普段楽しんでいる迷路を自分なりに表現。色の使い方、クレヨン、マーカーの使い分けが私のお気に入りです。(描写時3歳半)

下の絵は、「河川敷でライオンの凧をあげている絵」。幼稚園で行ったお正月遊びで河川敷で凧揚げをしたことがとても印象に残っているようです。ライオンの凧ではなかったと思いますが、娘はライオンが好きなので、おそらくライオンの凧を描いたのでしょう。緑の色鉛筆が河川敷の草木を良く表現しています。(描写時4歳1ヶ月)

次の絵は、「ハワイの空、ヨット、海、お魚の絵」。ハワイに行ったことのある小学生のお姉ちゃんとハワイについて話をしている時に描いた絵です。3歳半で行ったハワイ旅行は娘にとってとても印象深く残っているようです。全てブルーで構成されている絵ですが、空、ヨット、海、お魚とブルーの中でも色を使い分けて描いています。また立体的な構図を上手に捉えています。(描写時4歳1ヶ月)

最後の絵は、「ひまわりを見ている私」。これは夢で見たことを再現したとのこと。まだひまわりが咲く時期ではないですが、図鑑で見たひまわりの印象がそのまま夢に出てきたようです。これは幼稚園の自由遊びの時間に描いています。人や動物の絵が多く、花の絵をあまり描かないので、驚きました。(描写時4歳1ヶ月)

このように、子どもが描いている絵を見ていると、様々な子どもの想像力に触れることが出来ます。「お絵かき」とは、言葉が未熟な幼児にとって、自身の心をアウトプット、表現できる手段で、描いた絵を通じて子どもが感じているいろんな思い=心の中を知るきっかけになります。まさに、「お絵かき」とは、子どもの心が聞こえてくる、子どもの豊かな心と対話できるとても素晴らしいツールだと感じています。

こんなふうに感じていた矢先、子どものお絵かきについて更に見識を深める素晴らしい本に出会いました。美術研究の大家、皆本二三江著「『お絵かき』の想像力」(2017年2月発刊)です。この本は、子どものお絵かきを通じて絵の不思議と子どもとの関わり方、子どもの持つ可能性を探っています。

この本の中で、私自身が興味を持ったことを少しご紹介したいと思います。

まず、2〜3歳の子どもって人を描く時に、頭から手や足の出る「頭足人」を描くんですよね。これってとても可愛い絵なんですけど、よく見るととても不思議な絵なんです。娘もずっとこの絵を描いてきて、4歳になり、ようやく身体を描くようになりました。それでも手は顔から出ていたり、顔と胴体のバランスは圧倒的に顔が優位な絵を描いています。これは、著者曰く、頭足人とは非常に古い時代の人類の祖先の姿であって、祖先から受け継いできたイメージを描いていると言っています。世界中の子どもが同じ順序で同じような形の頭足人を描くようです。

●3歳前半に描いた自分の顔

●4歳1ヶ月の時に描いた自分の顔

また、子どもって何かを見てそれを似たようなカタチとして描こう、とお絵かきをするのではなく、何も見ないで心の中にあるイメージを持ちながらそれを表現していることが多いと思います。私達大人が何か絵を描く時は、何かを見ながら似せて描こうとしますよね。だから絵が上手とか下手とかいう話になりやすいですが、子どものように心の中のイメージを表現しているのであれば、どんな絵でも上手に表現できたね、というスタンスで捉えることができます。このことに関しても、著者は、子どもは何かを見て描くのではなく、内部に持つイメージを描く、内部に持つ天性の能力の発露だと言っています。

その他に、本の中では男の子の絵と女の子の絵の違いについて記載しています。幼児の自由画における男女の表現傾向は、モチーフ、構図、色彩、配色等様々な分野で異なります。私自身娘と息子の育児生活の中で、改めて男女が生得的に持つ興味の違いについてはっとさせられることが多く、この絵の違いに関しては、これから息子のお絵かきが始まる中で、興味深く見て行きたい分野になっています。

また本の中には、幼児には絶対色感があるという話も出ております。大人になるに連れて退化していくと。まさに幼児期の子どもの脳は特別脳であることを実感します。

最後に、脳科学の観点からお絵かきや塗り絵を見てみると、実は脳の全体を使う、脳育に大変効果があります。
まず、手を動かして作業をすることは、前頭葉の運動野を刺激、下絵を塗ったり、どんな絵を描こうか等プランを立てるのは、前頭葉の中の前頭連合野を刺激しています。
絵の全体のバランスを把握することは、頭頂葉が司る機能で、絵を見定めたり、どの色を使おうか等の色彩に関しては、後頭葉を使っています。描いている絵の形や色に関する記憶を参照することは側頭葉を刺激しています。このようにお絵かきや塗り絵は脳全体を使う、とても素晴らしい遊びとなっています。

過去に娘が表現した絵に関するBlogを書いております。もしよかったら合わせてご参照頂けると幸いです。
・2歳児が描くパパとママのイメージ
http://www.knitgrace.com/2016/01/30/1877/

・2歳児 ブルーにまつわるエピソード
http://www.knitgrace.com/2015/10/22/1414/

・アーツ千代田 夏のこども芸術大学
http://www.knitgrace.com/2015/08/14/1165/

・クリエイティブマインドを育てたい〜絵の具お絵かき編〜
http://www.knitgrace.com/2015/07/11/970/

PAGETOP